ここでパージ政策と各階層の関係を見ておきましょう。
富裕層にとってのパージ
パージ政策は新たな建国の父たちによって打ち出されたとされています。
しかし、その背後には経済的な力を持つ富裕層の影が見て取れるのです。
富裕層が政治家たちをけしかけた可能性があります。
富裕層にとってみれば貧困層は邪魔な存在です。
基本的に目障りですし、自分たちの税金が彼らの福祉施策に使われることも不満だったのではないでしょうか。
また、富裕層にとっては殺人などの犯罪が免罪されるパージは究極の娯楽でもありました。
その経済力で政治家にも絶大な影響力を持つ富裕層がパージ政策を協力に後押ししたことは想像に難くないのです。
貧困層にとってのパージ
貧困層にとってパージ政策は恐怖以外の何者でもありません。
彼らは強力な防御力も攻撃力も持ちませんから、結局はパージの犠牲者になるしかありませんでした。
そこからカルメロたちパージ対抗勢力が生まれることはある意味必然でした。
貧困層が新たな革命勢力として組織化されていくのです。
パージなき社会
パージ政策は一部の富裕層などを除けば、確かにあまりにも理不尽な政策です。現実的にはありそうもないといわざるをえません。
この施策を産んだバックグランドに少し思いをはせてみましょう。
先進諸国は現代も様々な社会問題を抱えています。人口問題・環境問題・経済格差問題・途切れない世界的な感染症など数え切れないほどです。
パージ政策はこれらの課題を解決しようとして立案された様々な政策が全て失敗し、打つ手がなくなったときに浮上したのかもしれません。
本来はここまで行き着く前にもっと有効な課題解決方策を見つけるべきだったのです。
さて、カルメロたちの革命勢力は既存の秩序を打ち壊すだけでなく、新たな世界秩序を生み出す方策を打ち出すことができるでしょうか。
その社会がパージなき社会であることだけは確かだと思いたいものです。
人の心の暗黒面
この作品では人の心に巣くうダークサイドを見せつけられます。
弱者を虐待することの快感・愛するものを奪った者への憎悪などがパージ政策を裏で支えていました。
人の心の暗黒面は決して消し去ることはできません。
でも、そのような部分が存在するという現実を受け入れることから全ては始まるのかもしれません。
綺麗な着地の【パージ:アナーキー】
【パージ:アナーキー】は物語の設定の斬新さや次々と展開するアクションの素晴らしさもさることながら、人間性の本質にも迫る作品です。
山あり谷ありの末に主人公であるレオが最後まで人間性を持ち続けるという着地も爽やかな印象を与えます。
そもそも生物種の個体数調整などは自然摂理によるものであり、言い換えれば神の領域に属するものなのです。
それを人工的に調節するパージ政策などは検討すら許されるべきではありません。
この物語は、そのような人間存在の本質的な部分にも切り込んだものといえます。