その後ひょんなことからランチョーが恋に落ちた(1.恋)相手・ピアは、なんと宿敵ヴィールーの娘!
親友たちに背中を押され、ピアに愛の告白をしにいく一幕は、ドタバタのラブコメディ(2.滑稽)としても見ごたえがありました。
ピアの姉・モナの出産を助けるシーンは、かなりハラハラドキドキ(6.恐怖)させられます。
一方のサブストーリーでは、ファルハーンとラージューがやっと再会できた!と思ったランチョーが全くの別人という驚愕の展開に。
そこから「俺たちがランチョーだと思っていた相手は誰だったのか?」という謎解き(8.驚異)が始まります。
3時間弱の物語の真ん中あたりで、ランチョーが実は替え玉入学した学生だったと判明。
銃口を向ける”本物のランチョー”の攻撃をかわした(5.勇猛)ファルハーンとラージュー。
二人がランチョーの居場所を突き止めた後、結婚式場から花嫁・ピアを連れ出すシーンも、ハラハラドキドキの連続です。
ランチョーの影響でかなり大胆な行動を起こしまくる二人の様子は、見ていて微笑ましくなります。
そしてラスト。美しい海を背景に皆がついにランチョーと再会するシーンは、最高のハッピーエンド(9.平安)です。
嫌味なチャトルがランチョーを小馬鹿にしますが、実はランチョーは大発明家のフンスク・ワングルだった!
これがわかったときは、その痛快などんでん返しにスカっとした気分になります。
メインとサブのストーリーで、8つの感情が見事に網羅されており、最後に訪れるのは最大にして最高なハッピーエンド。
この感情の振れ幅が感動を呼ぶのでしょう。
主演・アーミル・カーンについて
本作の主演は、インドの国民的俳優と称されるアーミル・カーン。
みずみずしい大学生のランチョーを演じた彼は、撮影当時なんと44歳!見た目の若さに驚かされます。
撮影当時44歳にして大学生のランチョー役を熱演!
役柄に合わせて体づくりをする彼は、若者らしい体に仕上げるために筋肉をそぎ落とし、肌も綺麗に見せる工夫をしたそうです。
自分がほれ込んだ脚本でなければオファーを受けないことで知られる彼ですから、その気合の入りようにも納得です。
個性的なキャストの魅力
本作の中で、観る者に強烈な印象を残した“強大な敵役”ヴィールー学長についても触れたいと思います。
ヒロインはもちろん、悪役にも惹かれるキャスティング
この映画を名画にした立役者は、ヒーロー&ヒロインの魅力はもちろんのこと、敵であるヴィールー学長の存在も大きいと思います。
実際に、ピア役のカリーナ・カプールとヴィールー役のボーマン・イラーニーは、複数の映画賞で受賞を果たしています。
受賞歴に証明される悪役の重要性
ちなみに、彼が受賞したのは「2010 国際インド映画アカデミー賞」と「2010 フィルムフェア賞」の”悪役賞”。
他の国ではあまり見かけない賞ですが、敵役の存在はナヴァ・ラサの柱の一つであることを考えると、とても腑に落ちます。
チャトル役オーミー・ヴァイディアの「2010 スター・スクリーン・アワード」コメディアン賞受賞も納得です。
まとめ
インド映画の基礎「ナヴァ・ラサ」を踏襲しつつ、世界各国の人の心に響く要素を詰め込んだ意欲作が【きっと、うまくいく】です。
メインストーリーとサブストーリーの中で、8つの感情が巧みに組み合わさり、見事に融合。
それがラストシーンで見事に昇華し、芸術的エクスタシーを得られる作品です。
物語の根底に流れていた学歴競争や、苦学生のラージューやミリ坊主の背景に見られる貧富の差・カースト制度。
このような鬱屈した空気を吹き飛ばす意味では、カタルシスともいえそうです。
“今を生きることは何か”という万国普遍のテーマを描いたことで、観る者の心に問いかける大作となり得たのではないでしょうか。