しかし便宜上劇中のエヴァンの時間軸を単一で追っていくとわかりやすいと思います。
タイムリープの結果
いずれにしてもエヴァンは「過ちを犯した時点」に戻ることができます。
これは同時に「過去を修復しようとして失敗した数」でもあります。
つまり、本作が始まった時点ですでに結末は出ていて、1つを修復しても蝶の羽ばたきがさまざまな因果関係を生み、本作中に語られたどれかの結末になることを意味しています。
そうした意味では「声をかけずに過ぎ去ること」という結末が正しいといえるでしょう。
ほかにあるとすれば「トミーを説得した上でレニーに金属片を持たせない」というのが最良の選択だったかもしれません。
ですが「いざという時の対抗手段がない状態」でエヴァンはあのように冷静に説得できたのか。それは誰にもわかりません。
アナザーエンディング
本作はテーマ性に沿った素晴らしい結末であると同時に、視聴者が救いを求めたくなるエンディングで締めくくられます。
これを解決するパターンとしては「無理やりハッピーエンドに持っていく」「視聴者に結末の解釈を丸投げする」という方法が一般的な手法です。
本作が面白いのは、スペシャルコンテンツとしてほかに3パターンのアナザーエンディングを用意したところです。
計4つのエンドケースの中から、視聴者が解釈によって好きなもので締めくくるというこの方法。
分岐点の行動によって結末が左右される本作のテーマとも相まって、とても嬉しいプレゼントです。
以下、アナザーエンディングのネタバレ解説になります。
アナザーケース1:ストーカーエンディング
ラストシーンで「何もせずにすれ違う」という結末を、「声はかけないがエヴァンがケイリーを追う」という形に変更されています。
アナザーエンドの3つの中では、ちょうど中間に位置する属性を持ちます。
「これからやり直す(一から始める)」という意味では本作の世界観を破綻させず、希望もあるものとなっています。
一方で過去の修復に心を砕いた物語を否定してしまう結末ともいえるでしょう。
アナザーケース2:ハッピーサッピーエンディング
直訳すると「幸せで喜ばしい結末」です。
タイトルどおり「街ですれ違った2人が運命的な直感を感じ、会う約束をする」という3つのアナザーエンドの中で最もポジティブなものです。
このくらいの救いが合ったほうが視聴者の心情に寄り添っていて「そう、それ!」とはなります。
しかしこの結末がトゥルーエンドだとしたら本作がここまで高い評価を得たのかどうかは興味深いところです。
アナザーケース3:ディレクターズエンディング
本作のディレクターズカット版に収録されたエンドです。
エヴァンが出産前にタイムリープし、自分の存在そのものをなかったことにする代わりに周囲が幸せになるという、3つの中では(エヴァンからみて)最もネガティブなものになっています。
問題の根本を断つという思想は理解でき、ある意味一番効果的な解決方法ではあります。
一方で「生きることの難しさ」もテーマに含まれていると解釈すれば、「救いがなさすぎる」という印象も与えます。
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