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【万引き家族】というタイトルは鑑賞する人や方法によって捉え方も異なる、一言では表現できない深い意味合いを含んでいるのです。
【万引き家族】が伝えたいこと
【万引き家族】は是枝裕和監督が10年近くをかけて練り上げた作品です。そのため、この作品は非常に多くの事柄を鑑賞する人に訴えるものに仕上がっています。
こちらでは、作品が訴えることの中から「現代の闇」と「家族」に焦点を当てて解説しましょう。
「現代の闇」
【万引き家族】は「万引きしないと生計が成り立たない」という設定は、正に現代の「経済的苦境＝真面目に働いても報われない社会」や「経済格差」などの現実を象徴しています。
この経済的な問題の背景には、他人に決して知られることのない家庭の事情が大きく影響を与えていることも丁寧に描かれています。
こちらでは「現代の闇」として作品中で取り上げられている問題をいくつか取り上げて解説しましょう。
ＤＶ（家庭内暴力）
残念ながら日本ではＤＶ（家庭内暴力）の認知度が高まったことも加わったことも影響があるといわれていますが、毎年の認知件数が増加しています。
見て見ぬふりをする現代社会の風潮に流され、先進国である日本の社会であっても今もなお被害者は心身ともに苦痛に怯え、悩み続けているのです。
この作品中では、信代を通してその現状が細やかに描かれています。
信代は「ＤＶを受けていた夫を殺害した」ことで偽名での生活を余儀なくされ、全てを偽って堂々と社会で働くこともできずにいることも描写されています。
これはまるで「ＤＶを見て見ぬふりをする社会」「救済への対応が不十分な社会であるために、ＤＶによる被害に助けを求めて頼ることのできない社会の現状」を映し出しているようです。
児童虐待
この作品の中には「現在進行形で虐待を受けている子ども」と「子ども時代の過去に虐待を受けて育った大人」の両者が登場します。
この作品に強いメッセージや魅力を感じるのは、登場人物のそれぞれの「虐待を受けた」経験が、さまざまな形で絡み合い相互作用していることが丁寧に描写されていることも関係しているためです。
「虐待を受けて育つ」とどうなるかということも細やかに表現することで、是枝裕和監督は「現代の闇」に潜む「児童虐待」という問題の大きさを強く訴えているよう感じられます。
「スイミー」が象徴すること
【万引き家族】のストーリの中で奇妙な存在感を示すものの１つとして「スイミー」が印象深く残っている人も多いのではないでしょうか。