中には数ある教科書の物語りの中から「なぜスイミーが選んばれたのか?」「スイミーの物語の重要性が分からない」という人もいるかもしれません。
こちらでは、スイミーを作品中に取り込むことで何を伝えようとしているのかということについて詳しくご紹介しましょう。
「スイミー」が取り上げられた理由
是枝裕和監督はこの作品を制作する際に、親からの虐待を受けて施設で生活しながら通学している子どもたちの取材も行なったそうです。
その取材のときに丁度帰宅した女の子に「今は何を学んでいるか」と尋ねると突然国語の教科書を取り出し、施設の職員の方の制止も受け付けずに最後まである物語を朗読したそうです。
その物語が「スイミー」であり「朗読を終えた女の子が拍手を受けたときの笑顔が忘れられない」と監督は発言しています。
この取材に関するエピソードからも「スイミー」を作品中に取り込んだ監督の意図を理解することができるはずです。
「スイミー」のストーリーに【万引き家族】を重ねている
また、その主人公であるスイミーが「たった1匹だけ生き残り、旅で出会った他の仲間と知恵を絞り協力しながら困難を乗り越えていく」姿を【万引き家族】の登場人物に重ねたようにも推察することができるでしょう。
子どもの教育問題も指摘
「スイミー」は小学2年生の教科書に採用されている物語ですが、作品中では11歳になる翔太が朗読しています。
この描写はさまざまな解釈が可能ですが、もっとも伝えたいことは「極度の貧困は、子どもが必要な教育を受ける機会をも奪う」ということだと推察できるでしょう。
監督は、先進国の日本であっても「学校に通うことのできない子どもたちがいる」ことを「現代の闇」として表現しているのです。
「家族」とは
【万引き家族】の最大のテーマはそのタイトルからも「家族」であると言っても過言ではないでしょう。
「現代の闇」に潜みながらもたくましく生き延びる登場人物たちが描かれている【万引き家族】。
血縁のない家族であるにも関わらず「家族」の存在が彼らの「生きる」原動力となっていることが伝わってきます。
実の親子では通わせることのできなかった「想い」や得ることのできなかった「愛」が、たとえ一瞬であっても偽りの家族である柴田家では成立することができたのです。
この描写は鑑賞する人に「家族」の在り方について大きな疑問を投げかけているようにも思えます。
もう一度【万引き家族】を鑑賞して自分なりの答えを見出そう!
【万引き家族】は観る人によって感じるものや作品から投げかけられた問いへの反応や答えが異なるのも大きな魅力です。
1人で鑑賞するだけでなく家族や友人、大切な人と一緒に鑑賞してお互いの感じ方を語りあうことも作品の魅力をいっそう高めることにつなげられるでしょう。