テスは、女性が下に見られる状況の中で、努力と工夫を重ねて何とかして「ガラスの天井」を破ろうと努力しています。
一方のキャサリン。
キャリアとしては上々の立場にいながら(そこに至るまでは彼女なりの努力したのでしょう)部下を下に見ています。
さらに立場を利用して人の努力を横取りしようとしたりする横柄な人柄に変化してしまいました。
キャサリンには仕事にも男性関係(ジャックとの関係)にも、自分からは見えない「隙(すき)」が出来ていたのです。
マイク・ニコルズはこの映画を「悩み、努力をした人が果実を受け取る」、という分かりやすい図式で描きました。
2人のキャラクターはにはそれがはっきりと示された、といえるでしょう。
先述のように、キャサリンの最後がまるで水戸黄門の悪代官のように描かれています。
それは、まさにその証拠といえるでしょう。
努力はいい人間関係を呼ぶ
ジャックとトラスク産業社長の登場が語ること
若干ステレオタイプの大団円という気がしないでもありません。
本作のキーパーソンであるジャックと、テスを積極的に評価してくれるトラスク産業の社長は、テスの成功(成り上がり)に大きな影響を持つ人物でした。
こうした人物の登場は、ご都合主義な匂いもしてしまいます。
テスがトラスク産業にスカウトされた理由とは
しかし良く考えると、努力を惜しまず勇気を持って行動したテスの姿が彼らを吸い寄せたとみることができるのではないでしょうか。
努力すれば自分を評価してくれる人は必ず現れる、ということです。
トラスク産業の娘の結婚式に全く関係ないのにジャックと乗り込み、みごと社長とのダンスの最中に商談のアポをとってしまったのですから。
テスを引き抜いたトラスク産業の社長が買ったのはテスの能力だけではありません。
研究と努力を惜しまぬ姿勢、そして大胆な行動力を買った、とみることができます。
カーリー・サイモンの音楽
メインテーマを効果的に使い回す
オスカー主題歌賞、ゴールデン・グローブ歌曲賞を受賞したカーリー・サイモンの主題歌「Let The River Run」について記しておきましょう。
作品での音楽は、この曲の一番記憶に残るメロディーラインを作品のシーンに合わせて、テンポや楽器編成、アレンジを変えて使うのみ。
時にメランコリックに、時に勇猛に作品を盛り立てて行きます。音楽の使い方が印象的で上手いな、と感じさせられます。
気心の知れた仲
本作の2年前に「心みだれて」(ジャック・ニコルソン、メリル・ストリープ主演)でマイク・ニコルズ監督はカーリー・サイモンを起用しています。
二人は気心の知れている仲。「卒業」でサイモンとガーファンクルをフィーチャーした実績を持つ音楽の使い方が上手な監督です。
そんな音楽の使い方にも注目するのも映画の楽しみといえます。
「ワーキング・ガール」の描く世界
男女同権が今ほど徹底して叫ばれていなかった時代に、ビジネス界において「ガラスの天井」を破ろうとしたテス。
若干破天荒な部分もありましたが、果敢に挑戦した彼女の姿に、観客はシンパシーを感じることができます。
マイク・ニコルズ監督は喜劇的味付けの中、時代を反映した女性の生き方を描きました。