注目されるという空虚さや、飽きられるという無常さを感じずにはいられません。
片目で見えた世界
りりこが片目で見た世界は、それまでの世界とは全く違ったものだったでしょう。
不安からの解放
美を手にいれたことでりりこは地位や名声、権力そして男性達を手にしてきました。
多くのものを所有するということは、その分失う不安も大きくなるものです。
片目となったりりこは、全てを過去のものとする覚悟が出来ています。
完璧な美を失った彼女は、不安や嫉妬心から解放され心は穏やかになったことでしょう。
新しい世界
誰も私を必要としていない
だから私が決めて、私が壊すの
引用:ヘルタースケルタ―/配給会社:アスミック・エース
上記はりりこのセリフです。
自分はもう人の為に存在しなくていい、自分の為に存在すればいい、とも取れます。
片目になったことで、彼女には自分の為に生きる新しい世界が見えたことでしょう。
りりこは何も失っていない
整形の副作用であざが広がり、ついには片目を失ったりりこですが、彼女は更に強くなっていました。
彼女が失ったものはない
りりこがこれまで大切にしてきたものは、全て偽りのものでした。
偽りの愛情や空虚な人気、そして偽りの美貌です。
しかし彼女は偽りの姿を脱ぎ捨てただけで、何も失ってはいなかったのではないでしょうか。
むしろ、自由と真の美を手にして更に華やかに成長しています。
りりこはずっと「タイガー・リリー」だった
麻田はりりこのことを称讃しているように考察出来ます。
彼女をタイガー・リリーと呼んでいるのも、その表れでタイガー・リリーは気が強く意志の強さと心の強さを持っているのです。
時代を切り開きトップに君臨しようとするりりこの強さを認めており、彼女が芸能界を離れ行方不明となったラストでもその気持ちは変わっていません。
見た目だけではなく、本当のりりこを理解していたのは麻田だったのでしょう。
蝶の意味
劇中には蝶が沢山登場していますが、蝶は美しい女性の象徴です。
しかし、蝶は儚い生き物なので美しく成長してもすぐに命が過ぎ去ってしまいます。
美しいものは命が短く儚いということを表す象徴として、多くの蝶が作中で起用されていたようです。
モデルとして活躍し、苦悩に悶えるりりこの周辺に多くの蝶が描かれていたのが印象的です。
「美」を求める女性の強さ
『ヘルタースケルタ―』は沢尻エリカの演技が高く評価された作品です。
女性の持つ美への執念や、芸能界を通しての人間の無責任な興味などを斬新な切り口から楽しめるのではないでしょうか。