死を目前にジョンは愛と幸せが詰め込まれた映画を観て感動しています。作られた幸せな世界がジョンを一時的に救ったといえるでしょう。
看守たちの涙の訳
ジョンの死刑執行は、看守たちにとってこれまでになく辛いものとなりました。
差別的な死刑がまかり通ること
1935年は黒人差別が当たり前に存在し、罪なき黒人が冤罪で処刑されていた時代です。
ジョンはまさに差別を受ける側の人間であり、更に無罪の人間です。そればかりか人を助ける善人でもあるのです。
心優しいジョンが、差別と憎しみの目に囲まれて死を迎えることは看守たちにとって心が張り裂ける思いだったはずです。
善人が死刑になること
仕事とはいえ罪なき人間に死を与えなければならない立場は、どれ程辛いものだったことでしょう。
もしジョンが死を望んでいなかったら、看守たちは必死に彼の無実を叫んでいたかもしれません。
自分達の無力さ
看守たちはジョンを殺すことでしか救えないという無力さに対して、悔し涙を流したのではないでしょうか。
世界の苦しみを受け取ってしまうジョンを楽にしてあげる方法は「死」しかなかったのです。
人間の無力さ、自分達の死刑執行人としての無力さを実感した日となったでしょう。
当時の過ちを後世に残す名作
「グリーンマイル」を観る上で抑えておきたいのが、背景となる世界状況です。
世界恐慌による不安が充満
1935年というと世界恐慌の真っただ中です。多くの人が失業に苦しんでいたので、パーシーのようなコネをちらつかせる男が幅を利かせていました。
黒人差別も強く、裁判では陪審員が差別的理由で判決を下すことも多々あったようです。
ジョンが無罪であるにも関わらず、死刑を執行せざる負えなかった理由もこのような背景があった為と考えられます。
死刑制度がリアルに再現
劇中には処刑場の見学席や死刑執行のシーンなど、かなりリアルに描写されています。
これは死刑制度について観る者に考えさせるためです。
死刑と聞いても言葉の上でしか理解できないのが通常です。しかし死刑の実際の現場を知る事でその重みを実感することが出来ます。
当時はジョンのように冤罪で死刑を執行される人が多く存在しました。「命」を裁くという重大な責任について深く考えさせられるシーンです。
グリーンという色が示すもの
劇中で死刑台への道をグリーンマイルとよんでいたように、欧米ではグリーンという色に不気味や毒、怪物といったイメージを持っています。
欧米の映画に登場する怪物や悪役にグリーンの色を使用しているのもその為です。
死刑台への道は長年使用され色褪せたグリーンであることに死への恐怖が映しだされています。
良心が涙を誘う最高に泣ける映画
「グリーンマイル」で取り上げられている死刑執行人は、世界的にも差別を受ける存在でした。
そんな彼らの苦悩にフォーカスを当てた映画は命の権利を問う大きな話題作となっています。
観る者の良心に語り掛け、良心があるからこそ泣ける映画なのです。
世の中の不条理に対抗するでもなく、苦しみながらも受け入れグリーンマイルへ向かって歩む姿は「命」とは何かを再確認させられます。
最高に泣ける映画は、多くのメッセージを世界中に投げかける奥深い映画だったのです。