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「7月4日に生まれて」はロン・コーヴィッグの自叙伝を元に1989年に制作された映画です。
戦争を独自の観点から批判し、戦死者を英雄と呼ぶアメリカに大きな波紋を投げかけました。
戦争の英雄に憧れたロンは戦争に参加して何が変わったのか、彼の怒りは何に向けられていたのか。
ロンの脳裏に焼き付いた、赤ん坊の声が与えたダメージはどれ程大きかったのでしょう。
戦争という魔物に立ち向かう1人の男の心の叫びを徹底解明していきましょう。
映画の背景はベトナム戦争
「7月4日に 生まれて」は実話を映画化したものです。
背景は戦争、アメリカの黒歴史ともいえるベトナム戦争ですが作品を深読みする前に背景である戦争を詳しく理解しておきましょう。
動くものは全て殺せ
ジャーナリストのニック・タース著の本「動くものは全て殺せ」はベトナム戦争を語るものとして世界中で話題になりました。
劇中にも出てくるソンミ村での村民504人の無差別虐殺のような悲劇が、ごく普通にベトナムで行われていた事実が語られています。
ロンが生涯忘れられなくなった赤ん坊の泣き声は、戦争に参加したものすべての脳裏に焼き付いていることでしょう。
この非人間的な行為は、国防総省を筆頭に国ぐるみでの隠蔽が行われていたのです。
原作者ロン・コーヴィック
映画の原本となった「7月4日に生まれて」の筆者ロン・コーヴィックは元アメリカ海兵隊員であり、反戦活動家です。
劇中のロンと同じように自ら海兵に志願し、脊髄損傷の重傷を負い名誉負傷章であるパープルハート章を授与されています。
そんな彼は、1970年に反戦運動を起こし生涯12回以上も逮捕されています。
映画同様、ロン・コーヴィックの心の怒りはよほど強かったのでしょう。
奇襲攻撃を受けたベトコンとは
劇中でロンが奇襲を受けたベトコンは、アメリカが支援する南ベトナムにおいて反アメリカを唱える南ベトナム解放民族戦線のことです。
ベトコンはアメリカの敵である北ベトナム(ベトナム民主共和国)に支援されています。
アメリカの反戦運動のきっかけ
ベトナム戦争を英雄視していたアメリカ国民が一転、反戦を唱えだしたきっかけがソンミ村ミライ集落を襲撃した事件です。
1968年にアメリカ陸軍が無抵抗の村人を無差別に射殺し、報道されたのです。
正義の為の戦争などないということをアメリカ国民が知った瞬間でもありました。
伏線からはじまる映画
映画は7月4日のアメリカ独立記念日のパレードからスタートします。
ロンはこの時、傷痍軍人たちを見つめますがこのシーンはのちのロンの運命を示唆するシーンとなっています。