エリオットの親の離婚はストーリーの核心に関わるものだといえるでしょう。
花を使った最高の演出
映画の中、鉢植えの花がE.T.のメタファーとしてさりげない効果を放っています。
E.T.復活の伏線
さらにそれはドリュー・バリモアの人生にまで影響を与えたようです。
E.T.は指先を光らせてさまざまな超能力を使います。中でも印象的なのが鉢植えの枯れた花をもう一度咲かせるものです。
一見地味ですが、実はとんでもないことです。なぜならそれは生まれたら死ぬという生命の大原則に反する現象だからです。
この超能力によって鑑賞者はE.T.が私たちとは完全に異なる世界からやって来たのだと認識させられます。
またこれはE.T.が生き返るという後半のサプライズ展開の伏線にもなっています。
花を甦らせる能力があるのなら自らの死を克服することもありでしょう。
E.T.のいる世界にはきっと老いや死というものがないのではないでしょうか。
E.T.の花のように甦ったドリュー
E.T.は宇宙船に戻る前、エリオットの幼い妹・ガーティにも別れを告げます。「Be Good(いい子で)」と声をかけます。
しかしその後、ガーティを演じたドリュー・バリモアは酒やクスリにおぼれたパンク少女になりました。
そのため世間では「E.T.には予知能力もあったのか」という笑い話も出てきました。
ドリューの名付け親であるスピルバーグ監督は彼女をいい子に戻すように声をかけ続けたそうです。それもあり彼女は立ち直りました。
ドリューはハリウッドで大活躍し、自身の映画製作会社まで作りプロデューサー業まで始めました。
その名も「フラワー・フィルムズ」。これはE.T.の花に引っかけたものだといわれています。
E.T.は花だけではなく、枯れかけていたドリューをも甦らせたといえるのではないでしょうか。
エリオット少年はなぜ地球に残る決意をしたのか
映画『E.T.』の最大の見せ場はE.T.とエリオットの別れのシーンです。なぜ少年は地球に残ることを決意したのでしょうか。
両親の離婚の受容
エリオットの別れの決断には、彼が両親の離婚を受け入れたのだという意味が込められているのだといわれています。
監督のスピルバーグ自身も両親の離婚を経験しており、エリオットに自身の少年時代を重ねていたはずです。
エリオットはE.T.と過ごす中で、出会いがあれば別れもあるという人生の宿命を悟ったのかもしれません。
このエリオットの決断には両親の離婚への受容とパパと別れたママへの許しがふくまれているといえます。
住む環境の違いを認識
ごくシンプルに観れば、エリオットがE.T.と別れたのはとても自然なことだといえます。
映画の一大転機はママがE.T.を見たことにあります。そこでエリオットの世界は一変しました。
半狂乱になったママは子どもを抱えてE.T.から逃げます。さらには宇宙服を着たNASAや当局の職員たちが家の中に入ってくるのです。
エリオットの家は大勢の職員によって取り囲まれ、検疫のためにビニールシートで覆われます。
一連の大事態で少年はE.T.と自分がいかに違っているのかを学んだのではないでしょうか。
そこで彼は自分がE.T.の住む星に行っても同じように扱われるのではと不安になったのかもしれません。
どんな生き物にもそれぞれに適した環境がある。エリオットが下したE.T.との別れの決断にはそんな成熟した認識がうかがわれます。
不鮮明だからこそリアルなオリジナル版のE.T.
E.T.は製作20周年を迎えた2002年に特別版が作られ、今ではそれが正規の『E.T.』となっています。
最大の改善点はやはりE.T.そのものです。20年前の技術力不足を補うため、多くのシーンでE.T.にCG加工などが施されました。
エリオットが最初にE.T.を見る所やE.T.がバスタブに沈む所などはオリジナル版よりも遥かにリアルになっています。