中国に帰ることも、マークを諦めることもしなかったスーインの強い意志。
それはマークへの気持ち無しでは得られなかった強さであるといえるでしょう。
試される2人の愛
2人には様々な障害が立ち塞がりました。試練に立ち向かう2人の愛を考察します。
周囲の干渉
理事長夫人からの忠告は、仕事という公の立場から恋愛という個人的な事柄に干渉するものであったといえます。
もし反発すれば仕事への影響は避けられない、と強い危機が感じられる場面です。
しかしスーインが大切にしたのは、仕事よりもマークへの愛情でした。
愛情の深さと、愛を貫く気持ちを強く持っていることがうかがえます。
また理事長からの報告と打診は、スーインの人生そのものに干渉するものでした。
この場面では、スーインのアイデンティティのひとつである中国人ということが愛の前に問われています。
マークを愛する自分も自分自身だ、と胸を張るスーインが描かれているといえるでしょう。
その姿は、物語の始まりの頃とはまた違う、愛のために強く立つしっかりとした女性像です。
時代の波
2人の関係は時代の波にも翻弄されました。
戦争は、愛し合う2人の幸福な時間を奪った最大の悲劇として描かれています。
またスーインも夫を亡くしたことで、混乱する中国の内情に翻弄されたひとりといえるでしょう。
戦争と、それによる時代の変化は2人にとってまさに試練といえるものでした。
離れながらもお互いを結び付ける愛情が、より一層増していく様子が見て取れます。
2人の“光り輝くもの”
2人の光り輝くもの。それは2人の愛、そして幸福でした。
その幸福と愛は、どんな障害や試練にも負けない強さを持っています。
そのことを証明しているといえるマークの言葉が、ラストシーンにあります。
僕たちは失っていない
2人の光り輝くものを引用:慕情/配給会社:20世紀フォックス
マークの死は、スーインにとって自分の一部を失う程の大きなものであったと予想できます。
スーインが愛するひとのいる自分に胸を張れたのは、マークへの愛情の強さがあったからです。
しかし、マークを失うことは、マークへの愛情を失うこととイコールではありませんでした。
死という最大の試練ですら、2人の愛を引き裂けなかったのです。
マークとスーインの育んできた愛情の深さ、そして強さが表されています。
そしてラストシーンでは、スーインに残されたものが哀しみではなく幸福であるという表現もされていました。
君は苦痛と対面するが癒すことが出来る
引用:慕情/配給会社:20世紀フォックス
スーインは上記のマークが残した言葉により、医者という仕事への誇りを取り戻したといえます。
マークの死は、医者という仕事が誇りある仕事だと気付かせてくれたのです。
それは誇りある仕事をして生きて行くという、マークが残してくれた幸福への道しるべでした。
死んだ後も、マークのスーインを思う気持ちが彼女の中に生き続けると感じられるシーンです。
互いを思う気持ちは失われないまま、寧ろ幸福なものとして生き続けるという意味を持つシーンになっています。