ジェーンの目の前の出来事すべてが彼女自身の物語。その時イタリアで起こっている出来事の「主役」になっていたのです。
カメラに記録しなくても、彼女の髪の毛から爪先まで全身でイタリアを感じていました。
ただの傍観者だったジェーンが物語の主役へと変化したことが8ミリカメラの有無で理解できるのです。
クチナシの花が象徴するもの
映画の中で印象的なシーンにクチナシの花が登場します。
あれがどういう意味を示しているか知っていると、この作品の見方が全然違ってくるのです。
クチナシの花言葉
クチナシの花言葉にはいくつかの意味がありますが、代表的な言葉は「とても幸せ」。
そのためウエディングブーケやプレゼントとして女性に渡されることが多いようです。
ジェーンがレナートに花を買ってもらう時にクチナシの花を選んだのも、この花言葉を知っていたためでしょう。
彼女の性格上、素直に気持ちを口にできません。
ですから自分が今幸せであることをこのような形で表現することを選んだと考えられます。
運河に落ちる「幸せ」
わざわざクチナシの花を運河に落とすシーンを作ったのはなぜでしょう。ジェーンが花を受け取れないのは逆に不自然に見えます。
しかしそこには監督の考えが反映されていました。
クチナシの花が占う未来
このシーンによって2人の未来を予想することができます。
「幸せ」を象徴するクチナシの花を失ってしまうことは、今後の彼らに幸せは待っていないことを意味します。
やがて2人は別れてしまうというヒントを観客にこの時点で与えていたのでした。
汽車で別れるラストシーン
いきなり別れを切り出したジェーンにレナートは拍子抜けしたことでしょう。
しかしレナートはいつもの強引さを発揮して彼女を引き止めるなんてことはしませんでした。
そんな事ができる立場ではないことを理解していたからです。
出会ってからずっとレナートが主導権を握ってきましたが、最後にはジェーンにその主導権が移っていました。
レナートの想い
別れのシーンでプレゼントの箱を壊してしまったレナート。
口説き上手でジェーンを手のひらの上で転がしていたイメージでしたが、最後には失敗をしてしまうほど余裕がなくなっていました。
その時彼が取り出したのがクチナシの花でした。
クチナシの花を買うために探していたら汽車の時間に遅れてしまったのかもしれません。それほど意味のある花でした。
妻子のいる男がアメリ人女性に手を出して遊んだだけと思っていたら、実は本当の愛だったことがクチナシの花言葉から分かるのです。
2人の短い幸せな時間に言葉通り花を添えたクチナシ。