出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/1708594000/?tag=cinema-notes-22

スタンリー・キューブリック監督といえばコッポラやスコセッシなどと共にハリウッドの歴史に大きく名を刻む巨匠です。

そのキューブリックにとって代表作ともいわれるのが『時計じかけのオレンジ』です。

公開から50年近くたっても、映像・演出・セリフと多くの点で今もなお新鮮さを保っています。

タイトルの意味や全編で描かれる暴力、また独特のセリフ回しの元になったナッドサット語などなど。

そういった点を切り口にして、ハリウッド・クラシックと呼ばれるこの不朽の名作を掘り下げてゆきましょう。

時計じかけの人間を生み出したルドヴィコ療法とは

時計じかけのオレンジ (字幕版)

『時計じかけのオレンジ』というタイトルの意味を知るには、まず作中で出てくるルドヴィコ療法について深く知る必要があります。

概要

ルドヴィコ療法とは映画および原作小説に出てくる架空の科学的な犯罪治療法です。

シンプルにいえば、暴行や強姦などで得られるエクスタシーを投薬によって強烈な不快感と結びつけ、犯罪行為を自己抑止する治療法のこと。

具体的には犯罪者に対してさまざまな悪行の映像を長期間・反復的・強制的に見せながら同時に薬による吐き気を与えるもの。

主人公アレックスは特殊な機械で常に目を見開かれた状態で、そんな地獄を体験することになりました。

ルドヴィコ療法は素晴らしい結果を出しました。治療によってアレックスは小さな悪行もできないほどに去勢されたのです。

アレックスの服役中、彼を監視していたヒトラー似の看守も、その目覚しい成果に呆然とするほどでした。

ルドヴィコ療法が実用化されればほぼ間違いなく刑務所の必要性もなくなるでしょう。

人間らしさは選択権にあり

しかしルドヴィコ療法には致命的な欠点もあります。それはただの対処療法であり犯罪者の更正を促す根治療法ではないのです。

映画の中で牧師は、犯罪者が善行を選ぶことこそが最も大切だということを訴えます。この点はこの映画の最大のテーマだといえるでしょう。

映画マトリックス・シリーズでも、最終的に人間らしさを決定づけるものは「選択」だという結論に至っています。

それがたとえ悪行だとしても、個人からその選択肢自体を奪うことは果たして正しいことなのか。それは悪行以上に悪い行いなのではないか。

このようにルドヴィコ療法は人間についての深い考察を促します。

『時計じかけのオレンジ』ってどういう意味?

Stanley Kubrick's Clockwork Orange (1971 Film)

この意味不明なタイトルは一体どこから来ているのでしょうか。

語源はロンドンの労働者階級のスラング

映画の原題は『A Clockwork Orange』になります。

まずClockworkですが「Queer as a Clockwork」というスラング・俗語が昔のイギリスの労働者階級の中にあったのだそうです。

直訳すると時計じかけのような奇人・変人。これは時計のように機械的にルール通りにしか生きられない人への皮肉だったはずです。

日本ではそういう人はマジメで誠実だと称えられがちです。が、逆に個人主義の根強い西洋では人間味のない変人に見えるのでしょう。

アレックスはルドヴィコ療法によって、社会規範やモラルに完全に従属させられます。

そのさまはまさに一分一秒と精確に針を打つ時計そのものでしょう。

オレンジに込められた言葉遊び

Orange・オレンジは原作者のアンソニー・バージェンスが言語学者でもあったことが絡んでいるでしょう。

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