さらにその娘・ヒットガールは11歳のブロンド美少女です。この超ギャップがあるキャラ設定は多くの人の目を奪ったことでしょう。
R15指定映画の要因を11歳の少女が作るギャップ
ヒット・ガールはただのキャラ設定に留まりません。実際に血なまぐさい殺戮をやってのけるのです。
『キック・アス』はR15指定の映画ですが、その多くの要因を作ったのがこの小さな美少女でした。
さらにヒット・ガールを演じたクロエ・グレース・モレッツは当時11歳。当時は彼女自身も自分の出演映画を観れなかったのです。
ハリウッドの映画史において、こんな皮肉なことは他になかったことでしょう。
小さな少女に残酷な殺戮シーンをさせたということで映画はバッシングされることにもなりました。確かにこれは一種の児童虐待です。
この点が引っかかってソニーなどの大手スタジオは製作を拒否しました。しかし映画が公開されるとヒット・ガールは非難以上に賞賛されました。
良くも悪くもそれがアメリカのショービジネスだといえるでしょう。
クロエ・グレース・モレッツにもギャップが
ヒット・ガールを演じたクロエ・グレース・モレッツ自身もまたギャップのある役者人生を送ってきたといえます。
『キック・アス』の前にはすでに『500日のサマー』という映画で青年に驚きの恋愛アドバイスを送る少女を演じていました。
ヒット・ガールの後も猟奇殺人鬼やサイコ少女のキャリーなどで、ほとんどの若手女優が避けて通るイバラの道を歩み続けています。
カワイイ文化真っ盛りの日本から見れば「かわいいのになぜ」となります。しかしかわいいからこそのギャップ戦略だといえるでしょう。
ハリウッドではかわいいだけでは売れません。ヒット・ガールのように11歳の美少女がリアルな殺戮をするくらいのインパクトが必要なのです。
ただクロエは単に変人ばかり演じることで人気者になったわけではありません。
怪演には普通の演技以上の心構えやスキルがいります。クロエはヒット・ガールを演じるに当たって7ヶ月ものアクション指導を受けたそうです。
彼女のユニークな俳優歴は、かわいいだけじゃダメなのよというハリウッドの現実を反映しているといえるでしょう。
復讐を誓ったクリス
作中ではキック・アスと同様に、自らコスプレしてヒーローになったレッド・ミストことクリスがいます。
しかしそこには裏がありました。クリスはギャングのボスである父フランク・ダミーコに男として認められたくてレッド・ミストになったのです。
彼はずっと正義のヒーローとギャングの間で揺れ動くナイーブな男でした。
が、最期には父の復讐に燃える悪になり、その怒りと共にこの映画を締めくくります。
そのクリスの心情の変化を見ると人がいつ善悪の選択をするのかが分かります。それは自分が大きな痛みを味わったときではないでしょうか。
そこで湧き上がってきた大きな感情を善行や情熱に向けるのか、あるいは悪行や復讐に向けるのか。
クリスの最期の心情の変化はその岐路に立たされたときの選択の大切さを訴えてきます。