両極端にも見える感動と狂気のシーンも、こういったディスカッションを経て出来上がったものなのでしょう。
恐怖を描くことで伝えるメッセージ
狂気ともとれるシーンは、現実の社会はそんなに甘いものではないというメッセージを感じます。
アーロが家を離れ外の世界へ出ることで、今まで自分が守られていたことにも気がついたでしょう。
恐怖を感じることが出来ないものは、生き残ることが出来ない
引用:アーロと少年/配給会社:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
ティラノサウルスは生き残る極意を教えてくれます。
恐怖を知り受け止めて乗り越えることが、大人への一歩なのです。
大人向けの作品といわれる理由
『アーロと少年』は、大人向けの映画だと囁かれています。
なぜ子供向けではなく、大人向けなのでしょう。
子供が狂気を受け止められない可能性がある
本作には作り手の精神状態を疑われるようなシーンが登場しています。
「恐怖」を共感するためとはいえ、子供がそのシーンを受け止められるか不安が残るところです。
幼い子に食物連鎖を教えるときは、刺激が強すぎるものは避けるというのが常識とされています。
リアルな映像ではありませんが、一度助けられた愛くるしい動物が無残に食べられるシーンは子供向けではありません。
子供が観る場合は、自分の中で十分に心の処理が出来るようになってからが良いでしょう。
子育てというテーマが隠されている
本作はアーロが成長する物語ですが、アーロへの子育ての仕方もリアルに描かれています。
子育てにマニュアルはなく、間違いも正解もありません。
アーロの父親も手探りの状態で子育てをしています。
『アーロと少年』は、親としての視点からも描かれているのです。
人間が家畜のように描かれている
本作ではスポットがまるで家畜のように描かれており、アーロは文明を持った賢い存在です。
もしも恐竜が絶滅していなかったらというもしもの世界を描いていました。
この世界で人間は文明を持つことが出来ず、動物のように匂いをかぎ生活するのです。
歴史がズレることで起こる違和感、大人ならこの世界観を味わうことが出来るのではないでしょうか。
種の共存を考えさせられる
アーロとスポットの出会いはまさに敵同士でしたが、彼らはいつしか強い絆で結ばれました。
しかし、お互いに一緒にいたいという気持ちはあるのに共に暮らそうとはしていません。
お互いに生きるべき世界が違うからです。
お互いが自然な形で幸せになる為に、アーロはスポットを人間たちに託しました。
ふたりの間に固い絆は生まれましたが、家族として一緒に生きることは出来ないのです。
背中をおしたアーロの強く優しい心こそ、原題の「THE GOOD DINOSAUR」なのでしょう。