お金に変わると周囲が豹変する、お金を得ることは一番周囲の応援を得やすい方法なのです。
このように現実的な女親に対し、理想や規律を重んじる男親がトトには必要でした。
このように余裕のない母親に甘えることができないトトが、心の拠り所として父親の代わりにアルフレードを慕っていたのも自然なことです。
子供がいないアルフレード
一方アルフレードにも子供がいません。毎日訪問してくるトトは、利発で物覚えもよいので、だんだん親密さが増してきます。
トトは、おまけに勇敢で、フィルムから火事が発生したときにも自らの危険を犯してもアルフレードを救いました。
親子以上の心の結びつきが2人には出来ていると言えるでしょう。
アルフレードは火事に遭って失明してからは、もっとトトを頼り、2人はさらに親密になっていきます。
友情以上の絆が、2人の間には築かれていました。
アルフレードの心の眼で見たもの
職人気質
アルフレードも10歳の頃から、映写室で働いており、仕事を体で覚えたタイプです。
小学校の卒業試験を大人になって受けていたくらいですから、子供のときはまともに学校に行けていないのでしょう。
頭で考えるタイプでない分、感覚的に仕事を覚えています。
失明して視覚を使うことができなくなってからは、感覚がさらに研ぎ澄まされていっているはずです。
会場のムード、空気感、人々の呼吸や熱から伝わってくるもので、今映写されているシーンが想像できたのに違いありません。
アルフレードは、観衆の反応と一緒に心の眼で映画を見ていたのです。技師の勘所は、ストーリーまで理解できるのです。
トトの才能
毎日映写室で一緒に過ごしてきたトトとアルフレードです。アルフレードは、トトに愛着を感じるのと同時に、特別な才能を感じ取ります。
自分は映写機の使い方を覚えて、毎日言われた通りに作業するだけの人間だと割り切っています。
対するトトは、自主的に8ミリで撮影も始めており、その自発性から、もっと違う未来が見られる人物として描かれています。
そうしてアルフレードは、彼の才能を信じていました。失明してからは、さらにトトの本質がよく見えていたのでしょう。
映写技師としてではなく、もっと創造的な仕事が向いているのを見えない目で見ていたのです。
自分のように狭い世界で限定された中で生きるのではなく、広い世界で自主的に生きていくことをアフレードはトトに望みました。
30年帰らなかった理由
アルフレードに言われたとはいえ、なぜトトは飛行機で1時間の故郷に一度も帰らなかったのでしょうか。
手紙も不要、連絡もせず、なぜそんなことができたのでしょうか。