六兵衛が非力に悔やみながら亡き父親はいつも見守っていたと伝えた時、エミの中で何かが変わりました。
過去の複雑な感情から解放され、ひとりではないという安心感が、少しずつ生まれ始めたのでしょう。
天国の存在を感じたのは真犯人に気付く場面。「加害者は被害者になりすましている」という啓示を受けたかのようでした。
裁判に勝って、天国の存在と孤独ではない安心感をはっきり自覚した時、幽霊が見えなくなったのです。
小佐野がマジックを披露する理由や心境の変化を考察
小佐野検事はこの映画に欠かせないキャラクターです。玄人まがいのマジックを披露するのはなぜでしょうか。
話が進むにつれ、小佐野の言動や行動が少しずつ変化しています。
マジックを披露した理由と小佐野の心の葛藤
小佐野がマジックを披露したのは、奇跡にはトリックがあり必ず解明できるという考えを証明するためです。
同じ席で死後の世界や超常現象も否定しています。ところが、小佐野には幽霊が見えていました。
死後の世界を否定しながら、実は幽霊が見えているという矛盾に悩んでいたのでしょう。
六兵衛が見えることに気付かれても死後の世界を否定する小佐野は、本心では心の葛藤に苦しんでいたと考えられます。
幽霊の出廷を認める小佐野はアリバイを信じ始めた
六兵衛の出廷を認めた小佐野は、厳しい尋問で弁護側を糾弾し論破ますが、本当は迷っていたように思われます。
幽霊の金縛りと聞いただけでは信じられませんが、小佐野には六兵衛が見えているので少しニュアンスが違います。
六兵衛の表情や発言を聞くうちに、本当にアリバイは嘘なのかと自問自答し始めたのではないでしょうか。
被告人のアリバイが仮に事実だとしたら真犯人は他にいることになります。
真犯人がいるなら殺人トリックを徹底的に解明しなければと考えていてもおかしくありません。
小佐野が初めてエミの意見に同意したのは検事としての信念が背景にある
法廷でエミが真犯人に言及した時には、小佐野も真犯人が他にいると確信しています。
エミのトリック解明に協力する意思を示したのは、小佐野が検事として真実を究明すべきと判断したからです。
小佐野の表情が弁護側を糾弾した時の、誰も寄せ付けない厳しさから柔らかい表情に変化しています。
落ち武者幽霊六兵衛の無念は本当に晴れたのか
幽霊としてさまよっていた六兵衛には、無実なのに濡れ衣を着せられ処刑された無念がありました。
六兵衛の無念は晴らすことができたのでしょうか。六兵衛の気持ちの移りかわりを深堀しました。
六兵衛の願いは名誉を回復すること
六兵衛の願いは自分の名誉を回復することです。
六兵衛の願いを形に表すと慰霊碑なのですが、本音はもっとたくさんの人に無実を証明したいはずです。
裁判で古文書をネタに糾弾され悔しがるところから、実在する全歴史文書を書き換えたい欲求がわかります。
それでも慰霊碑が建つことに喜ぶ六兵衛には、幽霊なのに現世の常識をわきまえた潔さがあります。
宝生エミに北条家の姫を重ねる六兵衛
慰霊碑が建つことで六兵衛の願いは叶いますが、六兵衛にはエミの幸せという新しい願望が生まれました。