出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07NRH6Q13/?tag=cinema-notes-22
第84回アカデミー脚本賞を受賞した、ウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』。
パリを舞台に、小説家を志す青年の不思議なタイムトラベルを描いたロマンティック・コメディです。
美しいパリの街並みを、現代、1920年、そして1890年と時代を越えて堪能できるこの映画。
ゴッホの『星月夜』をモチーフにしたポスターデザインもとてもお洒落です。
ですが、実は映画には全編を通してゴッホ本人が登場していません。
その理由、そして主人公ギルがタイムトラベルを通してどのように変化したのかを考察します。
次々登場する魅力溢れる偉人たち
『ミッドナイト・イン・パリ』の大きな見どころのひとつが、実在した芸術家たちの登場です。
1920年代にタイムスリップしたギルが出会う、フィッツジェラルド夫妻やヘミングウェイ、ピカソたち。
トム・ヒドルストンをはじめ人気俳優たちがいずれも魅力たっぷりに演じています。
主人公ギルにとっては、憧れの時代を生きた憧れの偉人たち。
結婚や自分の夢について悩む彼は、彼らから人生を解決するヒントを得ようとします。
そして、1890年、ベル・エポックへの二重タイムスリップ。
アドリアナと共にギルは、彼女が焦がれた時代を生きた芸術家たちにも出会います。
しかし、そこにベル・エポックを代表する画家、ゴッホの姿はありませんでした。
不在の偉人、ゴッホ
しかし、この映画のポスターにはゴッホその人の作品『星月夜』がモチーフとして使われているのです。
観客はゴッホの登場、それも重要な役回りでの登場を予測するはずではないでしょうか。
なぜ『ミッドナイト・イン・パリ』にゴッホが不在なのか。
まずはゴッホその人、そして彼の描いた星月夜という絵に迫ってみましょう。
“不遇の芸術家”イメージのゴッホ
ゴッホと言えば、生前は1枚しか絵が売れなかったという逸話が有名ではないでしょうか。
実のところ、このエピソードは真実ではありません。
ゴッホは画家として活動を始めたタイミングが遅く、結果、生前に売れた絵は数枚に留まったとのことです。
参照元:https://www.huffingtonpost.jp/2015/10/03/5-things-about-vincent-van-gogh_n_8238760.html
しかし、繰り返しになりますが前述のエピソードはとても有名です。
そのため、ゴッホには「生前は不遇だったが、後世で才能を認められた人」の印象がついています。
事実、彼の絵に高値がつきはじめたのは死後、1900年代に入ってから。
ちょうどギルのタイムスリップ先、アドリアナたちが生きた時代の頃のことでした。
また、彼がその生涯の幕を自殺という形で閉じたことも、不遇なイメージを助長しています。
ゴッホの『星月夜』
青い色彩と黄色くぼうっと輝く月と星のコントラスト。
そして何より渦を巻くような夜空の表現が印象的な絵画です。
この『星月夜』を、ゴッホは精神病院で療養している間に制作しました。
ゴッホは自分が見たようにしか絵を描かない、と発言したといわれています。