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ソビエト連邦(以下ソ連)の新型原子力潜水艦レッドオクトーバーの亡命計画を題材にした映画「レッドオクトーバーを追え!」。
緊迫したストーリー展開の中で通じ合う、艦長マルコ・ラミウスと中央情報局(CIA)ジャックライアンが描かれています。
ラミウス艦長は、なぜレッドオクトーバーを亡命させたのか。
冷戦時代末期に危険を承知で亡命を決意した目的を、ラミウス艦長やジャックライアンの心情から考察してみました。
1990年冷戦時代が終わって間もない時期に公開されたこの映画は、当時の時代背景もあって多くのメディアから注目されました。
第63回アカデミー賞では音響効果編集賞を受賞。ショーンコネリーの円熟した人間味あふれる演技は秀逸です。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/レッドオクトーバーを追え
レッドオクトーバーを亡命させた理由とラミウス艦長の考え
亡命は命がけの決断です。ラミウス艦長が亡命を決意した背景には、多くの考えが複雑に絡んでいたと考察できます。
冷戦末期の時代背景やレッドオクトーバーの最新装備についても言及してみました。
ラミウス艦長に亡命を決意させた時代背景
亡命を決意した理由のひとつは、冷戦末期の時代背景とソ連の軍事体制へのラミウス艦長の不信感だと思われます。
映画の設定は1984年11月。第二次世界大戦以降約40年続いたアメリカとソ連を代表とした冷戦時代の末期です。
当時、東側諸国の知識人たちが、社会主義体制の崩壊を予見して西側諸国へ相次いで亡命したことが社会問題になりました。
ラミウス艦長は、世界中の軍事関係者が一目置くほどの重鎮でした。世界情勢も十分理解していたはずです。
他の知識人と同様、ソ連にはもう未来がないと考えたのでしょう。
また、無意味な任務に長い時間を費やした虚無感と、妻を亡くし死に目にも会えなかった後悔の念もあったと思われます。
亡命を決行した日は、亡き妻の命日でした。
レッドオクトーバーをアメリカに提供する意味
レッドオクトーバーには、最新技術を結集したキャタピラー(無音磁気水力推進装置)を搭載していました。
無音状態でレーダーに探知されずに敵の直前まで潜航でき、攻撃を仕掛けることが可能になります。
ラミウス艦長は設計図を見た時、レッドオクトーバーを攻撃指向のソ連が持つべきではないと考えたのです。
レッドオクトーバーをアメリカに渡せば、ソ連の軍事兵器の開発技術は徹底的に分析されるのは確実。
しかし、アメリカはソ連のように自ら戦争を仕掛けることはないと判断したのでしょう。
キャタピラーも、ソ連だけが持っていれば脅威ですが他の国も持つことになれば無意味なものになるはず。
最新の兵器開発技術も、ラミウス艦長にとってはソ連だけのものにしてはいけないのです。
また、ラミウス艦長はかなり前の段階で、ソ連軍のやり方に嫌気がさしていたと思われます。
そんな中で、レッドオクトーバーの設計図を見たことが亡命決断の引き金になったのでしょう。
ラミウス艦長は輝かしい実績を残していますが、戦争推進派ではないようです。
社会主義体制への失望と自由の国へのあこがれ
ラミウス艦長の個人的な理由として、自由な国アメリカに対するあこがれや夢を抱いていたことも挙げられます。
亡命を画策するラミウス艦長やボロディン副艦長は、言語やアメリカの文化などに精通していたようです。
一方で、軍律最優先で個人のプライバシーを重視しないソ連軍のやり方には失望していたと思われます。
ラミウス艦長にとって名声や実績など意味のないもの。
引き換えに家族との時間や自由を失ったことのつらさを実感しているのです。