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映画「ヘアスプレー」は1988年公開の「ピンク・フラミンゴ」を代表作に持つジョン・ウォーターズ監督作品です。
それまで過激で刺々しい内容の作品ばかり作っていたウォーターズ監督が初めてメジャー作品を手がけています。
本作の舞台は1960年代初頭のボルチモアで、人種差別の壁を明るく前向きに乗り越えていくトレイシーの姿が魅力です。
公開当時はそこそこの興行収入でしたが、90年代のビデオ化を経てカルト人気に火が点き、一躍有名になりました。
2002年には本作のミュージカル版も製作され、更に2007年にはそのミュージカル版を映像化したリメイクも出ています。
本稿ではアンバーがダンス中に次々と悪戯される理由についてしっかり考察してきます。
また、黒と白の要素が散りばめられた真意についても深掘りしてきましょう。
トレイシーの魅力
「ヘアスプレー」を語る上でまずトレイシーの魅力を外すことは出来ません。
物語の求心力となっている彼女の人となりをじっくり見ていきましょう。
型破りな主人公
トレイシー最大の魅力にして本作最大の特徴、それは型破りな主人公であるということです。
それまでのミュージカル映画の主人公たるヒロインはスタイル抜群で容姿端麗な子がスタンダードでした。
一方のトレイシーはその真逆でスタイルはぽっちゃりでその容姿もお世辞にも綺麗とはいえません。
しかしダンスの才能はその見た目に反して凄まじいキレを誇り、並の女性ダンサーでは敵わない程です。
この辺りにウォーターズ監督の既成の価値観を破壊し新しい価値観を作り上げる作風が反映されています。
差別やコンプレックスがまるでない
そんな型破りなトレイシーが輝いている一番の理由は何よりもその天真爛漫な自然体の性格にあります。
彼女は自身が太っていることにまるでコンプレックスがなく、また他者を差別することもしません。
それは特殊教育クラスで出会った黒人の生徒達との交流において特に強く表れており、彼女には人種の壁など無関係です。
それでいて、決して他者を平気で傷つけるような無神経さもなく、それが自然な明るさを醸成しているのでしょう。
トレイシーのライバル・アンバー
トレイシーの魅力はライバルであるアンバーの存在もまた大きく影響しています。
アンバーは「ヘアスプレー」の「影」にして「悪」の象徴といってもいいでしょう。
トレイシーが突き進むスターへの道を阻もうとする彼女はどのような人柄なのでしょうか?
親の七光り
アンバーという人物像で一番目立つ特徴は「親の七光り」「虎の威を借る狐」です。
彼女が人気ダンス番組『コーニー・コリンズ・ショー』で長年トップに君臨してたのには両親の権力が背景にありました。
逆にいえばアンバーは親の七光りがなければ生きていけない乳母日傘で育った軟弱者でありましょう。
そしてその親の七光り以上にもっと厄介な毒気がアンバーの中にはあったのです。