その時に

これだってご遺体だよ

死ぬ気にならなきゃ食うしかない。食うならうまいほうがいい

うまいんだよなあ、困ったことに

引用:おくりびと/配給会社:松竹

といった社長の言葉に感銘を受けています。

そういった出来事が大悟自身に納棺師という仕事に向き合う力を与えたのでしょう。

遺族からの感謝

次に大悟を変えたのは納棺を行った後の家族の反応でした。

納棺後に

あいついままでで一番きれいでした

引用:おくりびと/配給会社:松竹

といった言葉や感激して泣きだす姿を見て納棺師の仕事のすばらしさに自ら気付いていったのでしょう。

それは

冷たくなった人間をよみがえらせ永遠の美を授ける。

それは冷静であり、正確であり、そして何より優しい愛情に満ちている。

別れの場に立ち会い、個人を送る。静謐ですべての行いがとても美しいものに思えた

引用:おくりびと/配給会社:松竹

という大悟自身のモノローグから知ることができます。

食べることの重要性

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この映画では食事シーンが非常に大きな意味を持っています。

大悟は作中で妻・社長・事務員などと食事を取っていました。

また、時には一人で食事しているシーンがあります。

実は劇中の食事シーンには重要な意味が込められていました。

生と死を表している

映画の中の食事シーンは生と死の対比を表しています。

納棺後に食べた干し柿や自宅に帰った後の鶏肉などはまさにそれです。

この食事のシーンでの大悟の姿はそのまま仕事への姿勢を表しています。

鶏肉を食べられなかったのは初めて目にした腐乱死体と重なったからです。

干し柿は社長と一緒になんとか仕事をやり遂げたので食べられました。

社長の部屋で食べたフグの白子はそのまま命を表しています。

特に注目するべきなのは納棺師を続けると決心した後の大悟の食事です。

これまで以上に食べることに積極的な姿勢がうかがえます。

なかにはフランスパンの上に刺身を乗せるなど、よくわからない食べ方もありました。

しかし、これも生きるということを表現したものだと考えられます。

こういった食事のシーンからも大悟が納棺師の仕事を理解していく家庭が見えてくるのではないでしょうか。

脚本は料理の鉄人の構成でも知られる小山薫堂

「おくりびと」の脚本を書いたのは、実は料理の鉄人の構成を行った小山薫堂です。

長年食に関する番組に関わってきた小山の経験が、映画の食事シーンに生かさています。

そのため、この映画では食事シーンが非常に印象的に描かれているのでしょう。

父から子への命のバトン

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この映画は大悟の仕事が認められて終わりではありません。

大悟が山下の母を納棺してしばらくすると、行方不明だった大悟の父が亡くなったという知らせが来ます。

父の納棺はもちろん大悟が行いました。

その時、父の手からはかつて大悟と交換した石文が出てきます。

これまで、人の死が繰り返し描かれていた劇中で、この石は父から子への命のバトンを表していました。

それは、父を納棺した後のシーンから明らかになります。

美香は大悟から預かっていた石を渡そうとしますが、大悟はその石を美香の手ごと包み美香のお腹に押し当てました。

美香のお腹には子どもがいます。

そのため、この行動は二人から、お腹の子へメッセージを送るための行為だったと考えられるでしょう。