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小笠原秋と小枝理子が音楽を通して知り合い愛し合う、せつないけれど温かい愛を描いた「カノジョは噓を愛しすぎてる」。
臨場感あふれる演奏場面と楽曲のクオリティの高さで音楽映画としても評価されました。
この映画はエンドロールの後のラストシーンが印象的です。
登場人物の心の動きから、このシーンが全体の物語の中でどんな意味をもつのか考察してみました。
「ちっぽけな愛のうた」に込められた秋の想いにも言及します。
「カノジョは嘘を愛しすぎてる」略称「カノ嘘」は青木琴美さんの原作を「タイヨウのうた」の小泉徳宏監督が映画化。
主演は佐藤健さん。ヒロイン・理子役は、一般からオーディションを勝ち抜いた大原櫻子さんです。
人気バンド「クリプレ」のリーダー坂口瞬(シュン)は三浦翔平さんが演じていました。音楽プロデューサーは亀田誠治さんです。
ラストシーンで初めて伝えた理子への愛
エンドロール後のラストシーンは、初めて本当の気持ちが通じ合う2人を描いていました。秋と理子は何を思ったのでしょうか。
せつない別れに涙する理子
理子は秋の嘘に泣かされ続けました。海外へ旅立ってしまう秋との別れに涙しながら歩く理子。心中は複雑でした。
別れの悲しさもありますが、自分の気持ちを抑えて海外に旅立つ秋の心情が痛いほどわかるからです。
理子の涙は、最後まで嘘をつき通そうとする秋のせつない胸の内を、自分のことのように感じて流す涙だったと思われます。
愛しあっていることは確実なのになぜ別れなければならないのか。その答えは最後に秋が理子を呼ぶ声で明らかになります。
そっと理子を抱きしめながら秋は自分の気持ちを伝えた
秋は、本心を伝えることなくその場を立ち去ろうとしますが、思い直して理子のそばに行きそっと抱きしめます。
理子への気持ちを伝えないままに別れることは、自分の本心ではないと考えたのでしょう。
一度背を向けて歩き始めたのは、愛を告白したい気持ちと黙って去るべきという思いが交錯して戸惑っていたからだと思われます。
ただ、最後に理子を抱き寄せた秋に迷いはありませんでした。
2人を後押しする夕陽
印象的なラストシーンでは、夕陽が2人のシルエットを浮かび上がらせていました。
月日が流れて、誰にも気がねすることなく会える日は必ずやってくるよと、夕陽が背中を押しているようです。
暗転したスクリーンの向こう側には、離れて暮らしてもお互いを思う気持ちは変わらないと見つめ合う幸せな2人がいたはずです。
海外に旅立つ決意をした秋と別れの言葉が信じられない理子
秋は、なぜ海外へ行こうとしているのでしょうか。
理子と離れてまで海外へ行く決意をした秋の心の動きと、理子の想いを中心に考えてみました。
過去を捨ててもう一度やり直したい
デビューの邪魔をしないためとはいえ、高樹総一郎の提案に乗って突然の別れを告げた秋。
秋は激しい自己嫌悪に襲われていました。過去も含めて、理子に嘘をついた自分の言動や行動すべてが嫌になったのです。
思い悩んだ秋は、理子との愛をあきらめて過去を清算するために、遠い場所でもう一度やり直したいと考えたのでしょう。