ここではそのエンディングについて考察していきましょう。

ハッピーエンドとストーカーエンド

ハッピーエンド

まずDVDに収められていたのがハッピーエンドとストーカーエンドです。

この二種類が採用されなかったのは監督自ら「主人公が過去から何も学んでないことになるから」と語っていました。

それもその通り、本作はタイムリープを繰り返して結局ケイリーと関わらないことが最善だと強調していたのですから。

結ばれないエンディングだからこそエヴァンの選択の試行錯誤と苦渋の決断に説得力が生まれることになるのです。

このエンディングを選ばなかったのは作品にとってもエヴァンにとっても最良の結果だったといえます。

胎児自殺エンド

自殺遺族になっちゃった!! (バンブーコミックス エッセイセレクション)

そしてディレクターズカット版で示されたのが胎児の時にへその緒をぐるぐる巻きにして自殺というエンディングです。

つまりエヴァンの存在そのものがなかったことになった結果周囲の誰もが傷つかない形で幸せになりました。

これはある意味究極のバッドエンドと究極のハッピーエンドが合わさった自己犠牲の一つの到達点ではないでしょうか。

しかし、これは幾ら何でも後味が悪すぎるものであり、胎児に戻って自殺などしなくても幸福の実現は出来ます。

だから作品としてのトータルバランスはエヴァンとケイリーが離れ離れになるエンドが良かったのでしょう。

エヴァンとケイリーの関係

どのエンディングでもエヴァンとケイリーは結ばれない運命にあったのではないでしょうか。

そうなるとエヴァンとケイリーの関係が本当にお互いを好きでいたのかどうかすらも怪しくなってきます。

一つの幸せの為に他方を犠牲にする形で理屈っぽく否定される二人の愛など所詮はその程度だということです。

恐らくエヴァンもケイリーも憎からず思っていても全てを犠牲にしてでも愛しているわけではなかったのでしょう。

だからこそ公開版のエンディングこそがしっくり来る形として収まったのだと推測されます。

諦めることも時に大切

諦める力: 諦めることで、新たな道が開かれていく

本作をじっくり考察していくと、最後に残るのは諦めることも時に大切であるというメッセージです。

諦という字は”帝(みかど)の言(げん)”と書く、即ち天から人に向かって下される真理の言葉なのです。

諦めるとはそれまでやっていたことを辞めるという意味だけではなく、何かが明らかになることも意味します。

本作においてはケイリーとの幸福をやめたことでみんなが幸せになるということが明らかになりました。

だからこそ切なさ・寂しさを伴いながらも後ろめたさのないエンディングとなったのではないでしょうか。

まとめ

影響力で少し世界が変わる楽しみ

本作は「過去をやり直せたら」と誰しもが一度は願うことを現実にする危険性を示すことに成功しています。

使い手に求められることは大きな力を手にしたときにそれをどう使うかということでしょう。

エヴァンはタイムリープによるバタフライ効果を捨て、一人の人間として地道に歩むことを決意しました。

コツコツ真面目に努力して頑張ること以外に自分も周りも幸せになる道はありません。

その当たり前のことを当たり前に出来る尊さを本作は奇想天外なSFとサスペンスを用いて教えてくれました。

だからこそ時を超えて国を超えて愛される名作となったのではないでしょうか。

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