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映画『アップグレード』は2018年公開のアメリカ合衆国のSF系バイオレンスホラー映画です。
監督・脚本を『ソウ』シリーズのリー・ワネルが、主演をローガン・マーシャル=グリーンが務めています。
物語は交通事故で半身不随になった男が妻を殺した組織に復讐するという割とありがちな内容です。
しかし、本作はソフトウェア・ステムのインストールやアップデート・不具合などPCの要素を盛り込んでいます。
終盤に近づくにつれてどんどん体の自由が利かなくなったグレイの衝撃のラストは見物です。
本稿では事件の真犯人の正体と目的をネタバレ込みでじっくり考察していきましょう。
また、グレイが最初から狙われていた意味や自分に発砲した理由にも迫っていきます。
超AIの暴走、その行き着く先
本作は決して目新しいモチーフは使っておらず、テーマも先達の作品群で語られたものです。
しかし、既存のものを組み合わせることでその先を見ようとしたのではないでしょうか。
例えるならターミネーターに人工知能HALが埋め込まれたらどうなるかという化学反応です。
この組み合わせにクライムアクション映画で盛り付けて独自の作品に仕上げています。
そんな既存の組み合わせから一体どんな所へ辿り着くのかを是非考察していきましょう。
真犯人の正体と目的
物語のラストでは妻を殺しグレイを死なせようとした真犯人の正体が明らかになります。
果たして彼の人生をここまで狂わせた真犯人は何者で、その目的は何だったのでしょうか?
終盤の展開から考察して謎に迫っていきます。
ステム
真犯人の正体はグレイが受け入れた超AI・ステムでした。
これを明かしたのはステムを開発した科学者・エロンであり、終盤に全てが明らかとなります。
大事なポイントは一見エロンが真犯人かと思わせておいてのミスリードになっていることです。
決して無関係ではなく、しかし無罪でもないステムの片棒をかついだ共犯者という立ち位置でしょう。
ここまでは予測可能の範囲ですが、それをグレイの衝撃と葛藤に繋げているのが実に鮮やかです。
そう、ステムは暴走したプログラムとして既に1個体として独立した人格を持っていました。
自在に動ける体
そして超AIの人工プログラムであるステムが欲したのは自由自在に動き回れる体でした。
幾ら優秀かつ狡猾なプログラムでもそのプログラムを実行してくれるハードは必要となります。
何故グレイなのかというと劇中でも屈強な肉体と戦闘能力の持ち主だからではないでしょうか。
だからこそそんなグレイを取り巻く人たちを除去するための計画をじっくり練ったわけです。
凄まじく用意周到な作戦ですが、見事に功を奏してステムはグレイという最高の肉体を得ました。
ステム=根幹
そして何よりも大事なのはステムという名前の由来です。
由来は勿論英単語Stemから来ており、語源は「立っている」ことから「木の幹」となりました。
そのように考えると、不思議なのは何故幹となる体がないのにステムという名前なのか?です。
ステムは自分の「幹」となってくれる最高の肉体が欲しかったのではないでしょうか。