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映画『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』は『甲鉄城のカバネリ』の後日談として2018年に製作されました。
スタッフは『進撃の巨人』のメンバーを中心とし、荒木哲郎が監督を務めています。
キャラクター原案は美樹本晴彦、脚本構成が大河内一楼と非常に充実しているメンバーです。
先進的な作品群が目を引く中で本作は敢えて王道的なファンタジー作品として注目を集めました。
日ノ本を舞台として人間とカバネのハイブリッドとなった主人公・生駒と仲間たちとの戦いです。
戦いの中で人間とカバネの間・カバネリの存在に迫っていく様は受け手の感動を呼びました。
無名を演じる千本木彩花の静かながら強い演技も見所となっています。
本稿では生駒と無名の関係を中心にネタバレ込みで掘り下げていきましょう。
また、負の感情とカバネの関係や無名がキスをした理由も併せて読み解きます。
疑心暗鬼を生じる
本作も兼ねた甲鉄城シリーズの一貫したテーマは「疑心暗鬼を生じる」ではないでしょうか。
日本軍とかスチームパンクとか昔懐かしい設定が混じっていますが、このテーマは現代でも通用します。
続編である本作でもそれは変わることなく、カバネリというだけで生駒は何も信用して貰えないのです。
しかし、そんな信用して貰えない彼が実は1番的確に物事の本質を見抜いて行動出来る天才という皮肉。
これはそのまま現代社会の構図にもなっており、真の天才は常に後ろで世の動きを察知しています。
それを知らない世俗の殆どは物事の表面だけを見て一喜一憂し騙されて疑心暗鬼を生じてしまうのです。
そんな物語として描かれる本作が果たして何を伝えてくれるのかをじっくり考察していきましょう。
生駒と無名の関係
本作で物語の核にあるのはテレビ版と同じようにやはり生駒と無名の関係です。
そこで今回はテレビ版との比較も交えつつ進展した2人の関係に着目していきましょう。
孤独からの解放
まずテレビ版から貫かれている2人の関係の根底にあるのは「孤独からの解放」です。
テレビ版では「弱者を切り捨てろ」と教える美馬の洗脳を受けた無名を生駒が解放しました。
本作ではその構図が逆転し、カバネリとしての苦悩を抱える生駒に無名が寄り添う形です。
無名はどんな時でも生駒のいうことを信じ、ピンチに陥っても尚彼のことを疑いません。
その信念を持ち続けたからこそ生駒が決して孤立せず真っ当なカバネリとして居られるのです。
無名が居なければもしかしたら生駒は人間を見限っていたかも知れません。
信頼出来る仲間
2つ目にあるのは「信頼出来る仲間」という単なる男女の関係だけではない絆です。
生駒と無名は決して単なる惚れた腫れたの安っぽいヒーローとヒロインではありません。
同じ位高い志を持ち共に戦う仲間・戦友という仕事上の関係でもあるのです。
これがまた本来なら性格も出自も考え方もまるで違う2人が一緒にいられる理由でしょう。
その集大成として見せるのが終盤での景之相手に見せる見事なまでの連携攻撃です。