これはオリジナル版と真逆のアイデアです。つまり最後の最後ですべては映画だったとあからさまに打ち明ける終わり方なのです。
偽ドキュメンタリーとしてユーモアも効いた最高の出口だといえるでしょう。そして何よりこの終わり方だと続編が作れるのです。
実際、この映画はその後約10年に渡って6作ものシリーズ作品を生み出しました。
映画最大の長所
映画の内容として最も素晴らしい点について考えます。
観るものの共感を誘う生活に密着した怪奇現象
怪奇現象とは何も特別なものばかりではありません。誰もがほとんど毎日のように体験しているものもあるのです。
その1つに就寝中のラップ現象があります。寝る前か寝ている最中、何か不思議な物音が聞こえることは誰にでも時々あることでしょう。
それがラップ音と呼ばれるものです。そして多くの人はいつしかそれに無関心になるものです。
本作の恐さは、多くの人にとって最も身近にある怪奇現象であるラップ現象を切り口にしている点にあります。
誰もがしょっちゅうラップ音を聞いているだけに、ケイティとミカが襲われる就寝中の奇怪な物音にリアルな共感を覚えるのです。
この映画を観た日の夜に物音が気になってなかなか寝付けなかったという人も結構いるのではないでしょうか。
『呪怨』からひも解くケイティの正体
悪魔に悩まされてきたケイティが最後に豹変したことで、彼女の正体は何だったんだと思った人も多いでしょう。2つの線が考えられます。
悪魔の使いぱしり
本作『パラノーマル・アクティビティ』第一作目で明かされるケイティの素性はわずかです。
8歳の頃から家で怪奇現象が始まり、不審火による火事で家を焼失。その後、転々とするも悪魔に呪われたようにどの家でも同様のことが起こる。
シリーズ全般として観ても後は妹がいることくらいしか分かりません。そのためケイティの正体は推測するしかないです。
監督のオーレン・ペリはDVD特典にもある来日中のインタビューで日本のホラー映画からの影響を明言しています。
アメリカ版の『呪怨』と『リング』が気に入ったそうです。
本作の日本版の続編が「TOKYO NIGHT」になったのも、おそらくJホラーへの敬意からでしょう。
ケイティは『呪怨』で伽椰子に憑依される人たちと重なります。ケイティは映画の中盤で深夜に夢遊病者のように室内をさまよいます。
そこからすでに悪魔の憑依は始まっていたことが考えられます。ケイティの正体は悪魔に使役される半死半生の人だったのではないでしょうか。
悪魔に同化した生身の人間
最後のカメラ目線での不敵な笑みは、最初から計画的に事を進めていたかのようなずる賢い印象を抱かせます。
『呪怨』の劇場版1作目の理佳のように、ケイティも悪魔を恐れるあまり悪魔と同化してずっと過ごしてきたのかもしれません。
つまり悪魔になった生身の人間です。
悪魔と一心同体になったケイティが恋人のミカの家でさんざんイタズラしたあげく彼を殺したのだという線もありえるでしょう。
最後のケイティの不敵な笑みもこの筋にピッタリ合致しています。
ミカの絶妙なキャラ
ケイティばかりが注目されますが、実は恋人のミカが非常に大きな役割を果たしています。
観る者の共感を誘うアメリカ人のステロタイプ
ミカは自宅のPCで株式投資をするデイトレーダーです。
そんな現実主義の男だけにオカルト系女子のケイティとはバランスが取れた良いカップルになります。
ミカが高価なカメラを買ってケイティの怪奇現象を撮影しようとするのも、そのウソを暴くためでした。
彼は恋人の言うことをまったく信じていなかったのです。