最後まで生き残ったのはレイジでしたが、今回の作品のキーマンともいえるのはユキトシです。
なぜなら、彼が蟲毒の話をしなければ本作での殺し合いは始まらなかったからです。
初めに殺人を犯したのはユキでしたが、そこから更に登場人物たちの疑心暗鬼の念は深まります。
密室空間での閉鎖感と、ユキトシの人間不信を煽る蟲毒の話が、本作の物語を作り上げたのです。
はたしてユキトシは蟲毒の話をただ知っていただけなのか。
それともユキトシは蟲毒の儀式を行うための組織から派遣された人間なのか。
劇中では、ユキトシは組織から派遣された人物として、ミチカを疑っていました。
けれども状況的に怪しいのはユキトシであり、ミチカを疑ったこともミスリードの一つだったといえます。
蟲毒を本当に信じていたのか
ユキトシが蟲毒の組織の側の人間という見方を提示しました。
一方、ユキトシが本当に蟲毒の話を知識として知っていた、という可能性も考えられます。
平気で嘘をつく姿や暴力性に満ちた姿。
ただ傲慢で、人が傷つくことに喜びを覚える人間なだけであったともいえるでしょう。
本作のラストは小説版のラストから“あえて”変えた
『ドクムシ』の小説版のラストは、本作でのユキトシの推測通りでした。
つまり、ミチカが蟲毒の組織側の人間であり、ラスト一人となるまで殺し合いをさせようとしたのです。
ミチカ自身も、過去の蟲毒の儀式による生き残りでした。
原作を知っている人が本作を観れば、ユキトシの推理が披露された段階でオチがわかります。
あえてラストを変えることで原作を読んでいない人はもちろん、原作を読んだ人まで楽しめる作品としたのです。
むしろ原作を知っていた人の方が、ラストで裏切られる展開となるので、より楽しめたことでしょう。
過酷な撮影の裏側
本作の撮影は過酷なものでした。
ロケ地として実際の廃校を使い、更に日の光が入らない環境で早朝から深夜まで撮影をしました。
これにはアカネを演じた武田梨奈も、日の光を浴びることができず精神的に辛かったと答えています。
またユキトシを演じた秋山真太も、リアルに演じるため、ユキトシ同様一週間水しか飲まない生活を送りました。
そのため、撮影の最後では秋山がフラフラであったとレンジを演じた村井良大も明らかにしています。
本作は、ストーリーに明確な答えを出していません。
蟲毒の実験やユキトシの正体など、様々な考察ができることこそ本作の魅力だといえるでしょう。