クールなハッカー、ナインボールを演じるリアーナの衣装はザック・ポーゼンが担当。
ユージェニー王女のウェディングドレスを手掛けたデザイナーだけあってさすがのカッティングの美しさです。ザック・ポーゼンはカメオ出演しているので、その姿を探してみてください。
ローズ・ワイル…ドルチェ&ガッバーナ
個性派女優ヘレナ・ボナム・カーターが演じるローズには夢見心地なバラのドレス。その名にちなんだのでしょう。
持ち前の独特の雰囲気でさっそうと着こなす姿はさすが、の一言です。
ターゲット”トゥーサン”が持つ意味
今回のオーシャンズの獲物はカルティエの至宝、”トゥーサン”。現存しないこの宝石が物語の需要な鍵を握ることになります。
このトゥーサンは実にオーシャンズにふさわしい獲物。それはなぜか、トゥーサンの由来からご説明しましょう。
トゥーサンは今は現存しない、伝説となってしまった幻のジュエリーです。
失われたジュエリー
ナワナガルのマハラジャのオーダーを受けて制作されたこのネックレスは、136.25ctという驚くべき大きさのブルーホワイトダイヤモンド”クイーン オブ ザ ネーデルランド”をセンターに。
そしてその周囲にも通常のダイヤモンドよりも遥かに高価な最高級のピンクダイヤモンドやブルーダイヤモンドを使用した目もくらみそうなマスターピースといえる逸品でした。
それほどの芸術品は恐ろしいほどの迫力を持ちます。
かつてマリーアントワネットを破滅に追い込んだダイヤモンドの首飾りのような魔力を放っていたのかもしれません。
”トゥーサン”と名付けられたこのジュエリーは、持ち主のマハラジャ亡命時に解体され、この素晴らしい芸術品は永遠に失われてしまいました。
こうしたストーリーを持つジュエリーをターゲットに設定したこともこの映画の面白さの一つです。
誰もが、ましてや女性なら心奪わずにはいられないジュエリーを前にしてその美しさの価値よりも金銭的価値を優先するビジネスライクなオーシャンズは現代的な、そして現実をしっかりと見据えている女性の象徴であることを表しているのでしょう。
ジュエリーの持つ歴史的背景や芸術品としての価値を顧みず解体していく様子はオリジナルの”トゥーサン”の運命を思い起こさせます。
この映画に使用された”トゥーサン”にも同じ運命を辿らせることで偉大な宝飾品に敬意を払ったのではないか、とも受け取れるのではないでしょうか。
また、このジュエリーのネーミング”トゥーサン”は、カルティエのジュエリーの歴史の中でも非常に重要な役割を果たした女性の名前です。
”トゥーサン”から何を読み取るか
かつて女性の名を冠したジュエリーである”トゥーサン”のオリジナルは男性であるマハラジャのために誕生し、マハラジャの首を飾りました。
そして時を経て蘇った現代の”トゥーサン”は男性ではなく美しい女性の首に飾られ、そして奪われ、解体されてその姿を失うのです。
これはこの映画のテーマ性を表しているようにも感じられます。
女性の名前を冠した”トゥーサン”は男性の首にかけられるものではなく、女性たちが自分の意志で扱うもの。
かつての男性社会で女性は”男性に付属する美しい連れ”という存在に過ぎなかった時代とは変わり、女性が自分の意志で装い、自分の意志で物事を考え、自分の意志で生きていくことの宣言でもあるのです。
「オーシャンズ」シリーズがこのタイミングで女性キャスト版の「オーシャンズ8」を送り出したのにもそんな意図が込められているのではないかと思います。
ですが、”トゥーサン”を採用したことでよりその意味合いは強くなったのではないかとも考えられますね。
ちなみに失われたオリジナルの”トゥーサン”のセンターピース、”クイーン オブ ザ ネーデルランド”は現存し、素晴らしいダイヤモンドコレクションで知られているMouawad社が保管しています。
再カットが施され現在では135.92ctになっているということ。