正しい行いよりも教会の一員としての行いを優先させたという罪の意識がベネディクト教皇の告白を引き出したのだと思われます。
ホルヘ枢機卿の叱責と赦しの真意
ベネディクト教皇からの罪の告白を聞いたホルヘ枢機卿は驚きを隠せず叱責しました。
それほど重大な過失を赦した真意とは一体どのようなものだったのでしょうか。
過去の教訓
ホルヘ枢機卿は自分の過去をベネディクト教皇に打ち明けましたが、それでも彼は自分の過ちを悔いていました。
もし当時にタイムスリップできるなら、別の選択肢を選んだでしょう。ホルヘ枢機卿は日々反省していたはずです。
そして自分と同じように過去に過ちを持つベネディクト教皇に対して、我が事のように叱責したのだと考えられます。
教皇を責めたかったわけではなく、若き日の自分に重ね合わせていたからこそ、強い憤りを感じたのではないでしょうか。
赦した理由
赦しとは上位の人が下位の人にするものです。本来ならば枢機卿が教皇に赦しを与えることはできないはず。
ですがここでホルヘ枢機卿が赦しを与えたのは、ベネディクト教皇の退位を受け入れたからでしょう。
ホルヘ枢機卿は教皇になることを拒否していましたが、赦しを与えた時点で教皇になる運命を迎え入れたと考えられます。
受け入れられない辞任
自分とカトリック教会の方向性が一致しないことから、ホルヘ枢機卿は辞任を申し入れました。
なぜホルヘ枢機卿はそれほど辞任したかったのでしょうか。そしてその辞任を拒絶したベネディクト教皇の目的とは。
辞表を出した理由
ホルヘ枢機卿には、軍事独裁政権に協力的だったとして裏切り者の烙印を押された過去がありました。
彼にとっては被害拡大を抑える唯一の方法をとったつもりだったのが、反感を買った理由は国民に寄り添えなかったことです。
正しいことと望まれていることは違いました。被害が大きくなろうとも、国民は彼にそばにいて欲しかったのでしょう。
この経験がその後のホルヘ枢機卿の行動を変えたと推測できます。街にくり出してコーヒーを買ったりしたのも、国民の話を直に聞くため。
フレンドリーに接するのも、相手が話しやすくなり本音を引き出せるからでしょう。
もう二度と国民の声を聞き逃さないために、彼は日々最善を尽くしているのです。
そんな彼がコンクラーベで選ばれなかったのですから、自分の全てが否定されたと感じたのかもしれません。
辞任を拒絶した理由
もしこの時の教会に不祥事がなかったら、ベネディクト教皇はすぐに辞表を受け取ったかもしれません。
彼らの性格は正反対であり、ベネディクト教皇はホルヘ枢機卿を嫌っていたように見えます。
しかし彼が辞表を受け取らなかったのは、教会の面子を保つ以外にも理由があったのではないでしょうか。
ベネディクト教皇は少年時代にナチスに加わっていました。
歯向かう国民を皆殺しにしたナチスの存在は、教皇になった今でも彼に暗い影を落としています。
尊敬される教皇という立場でさえ「ナチ野郎」と呼ばれるベネディクト。彼は過去を悔いているでしょう。
ナチスが行なったように反発する人々を切り捨てるのは簡単です。ホルヘ枢機卿を辞めさせるのも簡単。
しかしそれでは過去の繰り返しであることにベネディクト教皇も気付いていたのではないでしょうか。
だからこそ辞表を頑なに拒絶したのだと思われます。