まずこの指摘で国内の関心は一気に軍歴詐称疑惑ではなくキリアン文書の真偽へと変わりました。

こうすることで一気に人々の目から本当に探り当てるべき問題の本質を覆い隠したのです。

しかも捏造だと主張する根拠も書式の違いなどいってしまえば重箱の隅をつつく程度でした。

このようにいたずらに弁舌を弄ぶ意地悪な者の言動で論点が大きくすり替わったのが一つ目の意味です。

インターネットの脅威

IoT時代のセキュリティと品質―ダークネットの脅威と脆弱性

二つ目にそれまで個人情報発信の場だったブログが一気に反逆の狼煙として機能したことです。

今ではそれがTwitterやYouTube、Facebookといった共有型のSNSという形へと変わっています。

つまりインターネットの脅威を保守派のブロガーがこの指摘を通して示したのです。

他の報道機関までもが挙ってその尻馬に乗ってしまったことが事態を悪化させました。

ここでCBSがそれを捏造ではないとはね除ける鉄壁のロジックや証拠があれば持ち直せたでしょう。

しかしこの想定外の脅威に対抗する力を当時のCBSは持ち合わせていなかったことが窺えます。

民意の恐怖

民意のつくられかた (岩波現代文庫)

こうした民意は上手く軌道に乗れば最高の革命となりますが、一方で最大の障壁ともなります。

ブッシュ大統領のような人の上に立つ過激な指導者よりも一つの方向性を持った民衆の方が遥かに危険です。

この事件は真っ当な検証や議論による勝負ではなく数の暴力によって一方的に屈服させられたことになります。

確かにCBSがやろうとした報道の形にも個人の尊厳や人権を侵害しかねないタブーであったかもしれません。

しかし、それを一方的に民意で乱暴にねじ伏せてしまうことがあっていいのでしょうか?

そのような皮肉めいた教訓をこの後半の逆転シーンは伝えてくれているのです。

真実はメディアやネットにはない

グーグル ネット覇者の真実

こうして見てみると、もはやブロガーとCBSのどちらが正しかったかという議論が全く意味を成しません。

それよりも寧ろ真実は決してメディアやネットのような場所にないことが一連の事件から窺えます。

よくネットの情報は又聞きの知識ばかりだと揶揄されますが、それはメディアもそうなのです。

大事なことはそれらに踊らされず自分の五感を使い行動して得た本物の情報を大事にすることでしょう。

本当に大事な情報や真実はそれ相応の対価や代償を払わないと得ることは出来ないのです。

目に見える側に囚われないこと

本質を見抜く「考え方」

本作は軍歴詐称疑惑を巡る一連の事件を通して、メディアと個人ブログの双方の危険性を明るみに出しました。

その上で本当に大事なことは目に見える側に囚われず問題の本質へと迫る姿勢にあることが分かります。

今様々なメディアや娯楽が充実して物質のみならず情報さえも大量消費の時代となりました。

その中で自分にとって本当に価値のある正しい情報だけを抜き取ることは非常に難しいです。

しかし、それが出来るようになってこそこの情報社会を生き抜くことが出来るのではないでしょうか。

そのような時代の変わり目の瞬間を切り取った大変興味深い一作となりました。

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