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2019年バットマンは誕生80周年を迎えました。
バットマンが初めてアメリカのDCコミックに登場したのは何と第二次世界大戦の開戦年でもある1939年のこと。
そんな記念イヤーの2019年に公開されたのが『ジョーカー』でした。皮肉にもそこではバットマンが一度も出てきません。
それはジョーカーの絶大な人気を反映しているといえるでしょう。過去ジョーカーを演じた代表的な役者6人をここから比較検証してゆきます。
ジョーカーは作り手によって解釈が異なり、作品の数だけ別個に存在する珍しい悪役です。
アメーバのように増殖するジョーカーを多くの役者たちはどう演じたのでしょうか。
そしてジョーカーによってどんな物語が生まれたのでしょうか。最後にはバットマンとの奥深い関係にも触れつつ、ジョーカーの正体に迫ります。
シーザー・ロメロ:ハッピー・ジョーカーの誕生
そもそもジョーカーとはどのように生まれ、どうやって人気を得たのでしょうか。草創期のジョーカーを見てゆきましょう。
笑いと暴力が交じり合って生まれたジョーカー
DCコミックでのバットマンの登場から遅れること約1年。1940年の4月にジョーカーは初めて世に出ます。
知性とユーモアと残虐さを兼ね備えたサイコパスとして登場しました。
作り手によって七変化するジョーカーですが、この点はほとんどの作品に共通しているといえるでしょう。
この悪役像は奇しくも同じ1940年にアメリカで公開されたチャップリンの映画『独裁者』にも通じるものがあります。
そこでは喜劇王チャップリンが独裁者ヒトラーを演じました。このピエロと悪魔が一体になるアイデアはジョーカーにもあてはまるでしょう。
監督・北野武はよく「お笑いほど残酷なものはない」と言っています。彼の映画もまたほとんどがユーモア交じりの暴力映画です。
もしかすれば笑いとは迫り来る災いを知らせるサインなのかもしれません。ジョーカーの笑いが不吉に見えるのもそのせいではないでしょうか。
高度成長と共にジョーカーもハッピーに
第二次世界大戦が終わり、世界が経済成長期になるとサイコなジョーカーもハッピーな存在になってゆきます。
その最たる表れが1966年から3年間続いたTVシリーズだったでしょう。日本でも当時『怪鳥人間バットマン』として放映されたようです。
そこでジョーカーを演じたのがシーザー・ロメロでした。当時59歳ながら陽気でハイテンションなジョーカーを演じています。
シリーズではお金が出てくる自動販売機を学校において生徒たちを怠け者にしようとするなど、ジョーカーの悪行はかわいらしいものでした。
ロメロのジョーカーは危険な狂気をユーモアの枠にうまく収めていました。
それはルパン3世にも通じるドタバタ劇の愛すべき泥棒だったといえるでしょう。
それによってバットマンのTVシリーズはコント番組のようにシュールで明るいものになりました。
ジャック・ニコルソン:実写版ジョーカーの原型
ジョーカーといえば未だに1989年の映画『バットマン』のジョーカーを思い浮かべる人は多いでしょう。
ジャック・ニコルソンの名演によって、実写版ジョーカーの原型が形作られたといっても過言ではありません。
中年プレイボーイの悲劇
ニコルソンは最初からジョーカーではありませんでした。
ジャック・ネーピアというマフィアの一員で、ボスの愛人を寝取ったことでひどい目にあいます。
この筋は実際に女好きのニコルソンを反映していて愉快です。
ネーピアは警官やバットマンとの争いの中、薬品の液槽に落ちて真っ白になり銃弾を浴びて顔面麻痺になります。
そうして顔面白塗りで引きつり笑いのジョーカーが生まれました。ジョーカーのオリジン・出生話は原作コミックでも秘密に包まれたままです。